【後編】フォークリフトの危険行為とは?労働安全衛生規則をご紹介
「【前編】フォークリフトの危険行為とは?労働安全衛生規則をご紹介」の記事では、労働安全衛生規則に記されている、フォークリフトで遵守するべき項目をご紹介しました。
今回の記事でも、同様にフォークリフトの危険行為に関する条文を解説します。
目次
第151条の13(搭乗の制限)
「事業者は、車両系荷役運搬機械等(不整地運搬車及び貨物自動車を除く。)を用いて作業を行うときは、乗車席以外の箇所に労働者を乗せてはならない。ただし、墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。」
フォークリフトでは、落下防止のための人員を除き、運転席以外に人を乗せてはいけないことが明記されています。なお、落下防止のための人員を配置する際に関しても、フォークリフトの偏荷重が崩れないように配慮することが必要です。
第151条の14(主たる用途以外の使用の制限)
「事業者は、車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。」
実際に、フォークリフトを主たる用途以外で使用し、自身の家族が死亡してしまった事故事例が過去にありました。労働者に危険が及ばないときは使用して良いとされているものの、適切な目的でない限りは使用は控えるべきです。
第151条の15(修理等)
「事業者は、車両系荷役運搬機械等の修理又はアタツチメントの装着若しくは取外しの作業を行うときは、当該作業を指揮する者を定め、その者に次の事項を行わせなければならない。
一 作業手順を決定し、作業を直接指揮すること。
二 第百五十一条の九第一項ただし書に規定する安全支柱、安全ブロツク等の使用状況を監視すること。」
フォークリフトの修理に関しても、指揮者を定めて作業を実行する必要があるとされています。
第151条の16(前照燈及び後照燈)
「事業者は、フオークリフトについては、前照燈及び後照燈を備えたものでなければ使用してはならない。ただし、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所においては、この限りでない。」
フォークリフトを作業する際は、前照灯と後照灯を備えていることが原則です。
ケースとしては非常に稀かもしれませんが、夜間や早朝での作業時に必須となるものなので、点検時に点灯するかを必ずチェックしましょう。
第151条の17(ヘッドガード)
「事業者は、フオークリフトについては、次に定めるところに適合するヘッドガードを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、荷の落下によりフオークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
一 強度は、フオークリフトの最大荷重の二倍の値(その値が四トンを超えるものにあっては、四トン)の等分布静荷重に耐えるものであること。
二 上部わくの各開口の幅又は長さは、十六センチメートル未満であること。
三 運転者が座って操作する方式のフオークリフトにあっては、運転者の座席の上面からヘツドガードの上部わくの下面までの高さは、九十五センチメートル以上であること。
四 運転者が立って操作する方式のフオークリフトにあっては、運転者席の床面からヘツドガードの上部のわくの下面までの高さは、一・八メートル以上であること。」
併せて、ヘッドガードに関しては下記4つのルールがあることも覚えておきましょう。
1.フォークリフトの最大荷重の2倍(4トン以上の場合は、4トン)に耐えられる強度であること
2.上部枠の開口部の幅・長さは16㎝未満であること
3.運転席の座席上面からヘッドガードの上部枠までの高さが95㎝以上であること
4.立ち操縦の場合、運転席の床面から上部枠までの高さが1.8m以上であること
第151条の18(バックレスト)
「事業者は、フオークリフトについては、バックレストを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。」
フォークリフトは、バックレストがないものは走行してはいけません。
労働者に危険を及ぼす危険性がないものは許可されているものの、安全を守るためには極力使用しないことが賢明でしょう。
第151条の19(パレット等)
「事業者はフオークリフトによる荷役運搬の作業に使用するパレツト又はスキツドについては、次に定めるところによらなければ使用してはならない。
一 積載する荷の重量に応じた十分な強度を有すること。
二 著しい損傷、変形又は腐食がないこと。」
使用条件には「積み込む荷物の重量に対して十分な強度を持っていること」「激しく損傷・変形・腐食等を起こしていないこと」が明記されています。
第151条の20(使用の制限)
「事業者は、フオークリフトについては、許容荷重(フオークリフトの構造及び材料並びにフオーク等(フオーク、ラム等荷を積載する装置をいう。)に積載する荷の重心位置に応じ負荷させることができる最大の荷重をいう。)その他の能力を超えて使用してはならない。」
ここでは、フォークリフトが耐えられない(許容できない)ほどの積荷を積んではいけなかったり、能力を超えて使用したりしてはいけない旨が明記されています。
第151条の21(定期自主検査)
「事業者は、フオークリフトについては一年を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無
二 デフアレンシヤル、プロペラシヤフトその他動力伝達装置の異常の有無
三 タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無
四 かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無
五 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他制動装置の異常の有無
六 フオーク、マスト、チエーン、チエーンホイールその他荷役装置の異常の有無
七 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無
八 電圧、電流その他電気系統の異常の有無
九 車体、ヘッドガード、バックレスト、警報装置、方向指示器、燈火装置及び計器の異常の有無」
「2 事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。」
上記は、いわゆる「年次検査」に関するものです。年次検査は「1年を超えない期間ごとに1回」の頻度で行う必要があります。また、検査記録は3年間残しておくことが必要です。
第151条の22(定期自主検査)
「事業者は、フオークリフトについては、一月を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。
一 制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無
二 荷役装置及び油圧装置の異常の有無
三 ヘッドガード及びバツクレストの異常の有無」
「2 事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。」
こちらは、いわゆる「月次検査」に関する内容です。頻度は「1ヶ月を超えない期間ごとに1回」であることを覚えておきましょう。
第151条の23(定期自主検査の記録)
「事業者は、前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
一 検査年月日
二 検査方法
三 検査箇所
四 検査の結果
五 検査を実施した者の氏名
六 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容」
上述の通り、定期自主検査は検査記録を残しておく必要があります。最低3年間保持する必要があることを覚えておきましょう。
第151条の24(特定自主検査)
「フオークリフトに係る特定の自主検査は、第百五十一条の二十一に規定する自主検査とする。」
「2 フオークリフトに係る法第四十五条第二項の厚生労働省令で定める資格を有する労働者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 次のいずれかに該当する者で、厚生労働大臣が定める研修を終了したもの
イ 学校教育法による大学又は高等専門学校において工学に関する学科を専攻して卒業した者で、フオークリフトの点検若しくは整備の業務に二年以上従事し、又はフオークリフトの設計若しくは工作の業務に五年以上従事した経験を有するもの
ロ 学校教育法による高等学校又は中等教育学校において工学に関する学科を専攻して卒業した者で、フオークリフトの点検若しくは整備の業務に四年以上従事し、又はフオークリフトの設計若しくは工作の業務に七年以上従事した経験を有するもの
ハ フオークリフトの点検若しくは整備の業務に七年以上従事し、又はフオークリフトの設計若しくは工作の業務に十年以上従事した経験を有する者
ニ フォークリフトの運転の業務に十年以上従事した経験を有する者
二 その他厚生労働大臣が定める者」
「3 事業者は、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第五項に規定する運行(以下「運行」という。)の用に供するフオークリフト(同法第四十八条第一項の適用を受けるものに限る。)について、同項の規定に基づいて点検を行った場合には、当該点検を行った部分については第百五十一条の二十一の自主検査を行うことを要しない。」
「4 フオークリフトに係る特定自主検査を検査業者に実施させた場合における前条の規定の適用については、同条第五号中「検査を実施した者の氏名」とあるのは、「検査業者の名称」とする。」
「5 事業者は、フオークリフトに係る自主検査を行つたときは、当該フオークリフトの見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月を明らかにすることができる検査標章をはり付けなければならない。」
ここまで、フォークリフトの危険行為に関する条文をご紹介しました。
フォークリフトは日々の作業に必要不可欠なものであるからこそ、慣れや怠慢などによって適切な検査を怠ってしまうケースもあるでしょう。しかし、それらが人を巻き込む事故に繋がってしまう恐れもあるのです。
まずはぜひ本記事を参考に条文を理解し、事業所で徹底できているかを確認するようにしてください。