置き去り・バス事件が多発…同じ過ちを繰り返さないための原因と対策

2022年9月静岡県牧之原市で、認定こども園「川崎幼稚園」の置き去り・バスの車中で園児が放置され、死亡してしまう悲しい事件がありました。

発見された際に足元に飲み干した空の水筒が転がっていたことや上半身の服を脱いでいたことなど、当時の痛ましい状況は多くの人に衝撃を与えました。

静岡県の事件の前にも、置き去り・バス事件は発生しており、園児が死亡したケースは複数あります。今後、二度と悲しい事件を繰り返さないために、今回は置き去り・バスの事故発生原因を検討し、子どもを預かる大人、保護者、国としてどのような対策が求められているのか解説します。

繰り返される置き去り・バス事件…園児が亡くなる悲惨なケースも

繰り返される置き去り・バス事件…園児が亡くなる悲惨なケースも

園児が置き去り・バスに放置されるケースは、これまでに複数発生しています。

ここでは、園児が命を落とす結末となった最悪の置き去り・バス事件について、取り上げます。子どもが命を失った事件は、これまでに3件あります。

静岡県牧之原市で起きた悲しい事件

2022年9月認定こども園「川崎幼稚園」の置き去り・バスの車中で、園児が放置され死亡する事件が発生しました。

職員が置き去り・バスの中で、3歳の女児が意識失っているところを発見し、救急搬送されましたが、同日に死亡が確認されました。死因は熱中症で、送迎バスを運転していた園長が、女児を降ろさないままバスの中に閉じ込めてしまったことが事故の原因です。

園児が亡くなった事件は静岡県の他に過去に2件も

園児が亡くなったケースは、静岡県の事件以外に過去2件もあります。

① 2007年福岡県北九州市の事件

当時2歳の園児が置き去り・バスに約5時間放置され、死亡が確認されました。夕方頃に園児の不在が判明し、捜索が行われたところ、置き去り・バスの中で発見されました。死因は熱中症で、車内温度は50度近くに達し、発見当時園児の体温は40.8度もあったといわれています。

② 2021年福岡県中間市の事件

当時5歳の園児が置き去り・バスに約9時間放置され、熱中症により死亡しました。職員は園児の不在を認識していたにも関わらず、保護者に確認を取らなかったため、夕方にようやく発見されたとのことです。

なぜ置き去り・バス事件が起きるのか…原因はヒューマンエラー

なぜ置き去り・バス事件が起きるのか…原因はヒューマンエラー

置き去り・バス事件は、死亡に至らないケースでも多発しています。全国で事件が相次いでいるにも関わらず、どうして事故は繰り返されてしまうのでしょうか?

専門家は事故の原因は「ヒューマンエラー」であると分析しています。

乗降時に車内確認を怠る

園児の置き去り・バス事件の発生は、車内確認を怠ったことに原因があります。園児をバスで送迎する場合、送迎車の乗車時と降車時に人数確認が必要です。

・乗降時の名簿読み合わせ
・不在園児の確認

以上のルールが徹底されていなければ、送迎担当者や職員による「ヒューマンエラー」が発生しやすい状況と言えます。

職員の出席確認が不十分

園児がバスを降車した後、職員による教室内での出席確認が徹底されていない状況は、置き去り・バス事故の原因になります。

園児が不在にも関わらず、保護者から欠席連絡がない場合、職員は不審に思うべきですが、業務の多忙で、出席確認を怠るケースもあるようです。園児の所在確認を職員同士で共有するルールが定められていない場合、「ヒューマンエラー」が発生しやすいと言えます。

職務の基本が身についていない

送迎担当者の意識も問題視されています。保育施設では、資格を持つ職員が子どもの安全管理を行いますが、スクールバスの送迎担当者は資格や年齢条件が求められない場合もあります。

子どもを預かる立場として訓練されていない人でも運転ができることや、そもそも子どもを預かる立場としての意識に欠けている人が送迎の担当者になってしまうと、「ヒューマンエラー」が発生してしまうことは明白ですよね。

置き去り・バス事件再発防止…子どもを守る大人たちができる対策

置き去り・バス事件再発防止…子どもを守る大人たちができる対策

置き去り・バス事件は、職員や送迎担当者による「ヒューマンエラー」が原因であると分析できます。

園児の命が失われる悲しい事故を繰り返さないために、私たち大人ができることは何でしょうか。最後に、子どもを預かる立場、保護者、国それぞれに求められている対策を解説します。

子ども預かる立場としての対策

子どもを預かる立場として求められる対策は、以下の3つです。

・送迎車の乗降時の確認
・職員による出席の確認
・職員や送迎担当者の意識改革

預かる子どもを見守る体制作りや情報共有、業務のマニュアル化など、職員個人で負担するのではなく、職員全体で子どもの安全を見守る体制が求められます。

また、子どもを預かる立場としての責任意識は、職員全体で共有しておくべきでしょう。

保護者としての対策

置き去り・バスに放置されてしまった場合、子どもに対処方法を教えておく必要があります。

もしもの場合を想定し、置き去り・バスに放置されてしまったら、クラクションを鳴らすことを伝えておきましょう。実際にクラクションを鳴らすことも体験しておくとよいでしょう。大人であれば、軽い力で押すことができますが、子どもがクラクションを鳴らす場合、大きな力が必要です。事故状況を想定して、事前に訓練をしておくと良いでしょう。

国としての対策

政府は保育施設の送迎バス約4万4000台を対象に、安全装置の設置を義務化する緊急対策を策定しました。違反した場合、業務停止命令の対象となり、命令に従わない場合は罰則を科すこともあります。設置にかかる費用を補助する方針も明らかにしています。

装置の仕様は、置き去り・バスに残された子どもを検知するセンサーや、子どもの降ろし忘れがないことを確認するためのスイッチなどを想定しているとのことです。義務化する安全装置の仕様については、今後より具体的な仕様を指定する必要があるでしょう。

まとめ

置き去り・バス事件の事例を紹介し、原因と対策について解説しました。

置き去り・バスによって、子どもが命を無くしてしまう事故は、静岡県の事故が初めてではありません。この先繰り返し悲しい事故が起きないために、子どもを守る我々大人に、緊急的な対策が求められています。

子どもの安全を見守ることは、保育士だけでなく、国や地域、私たち大人の役割でもあります。子どもたちが安心して、伸び伸びとした成長を遂げるために、一人一人が子どもの安全に対して意識を向けることが必要です。

SOS-0001、SOS-0006置き去り防止装置

2023年2月、内閣府「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のリスト」に掲載。

品番:SOS-0006
認定番号:A-007
製造メーカー:株式会社TCI
装置の方式:降車時確認式

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